険しい山の中、風にかき分けられた木々の間に華やかな楼閣が見えます。建物の二階、書斎の窓辺で従者と話している高士が、この建物の持ち主でしょう。
この作品の見どころは何といっても、建物の緻密な描写です。瓦や簾をはじめ、どの部分を切り取って見ても手抜かりがありません。例えば向かって右側にある部屋には、風で膨らんだ簾の向こう側に、室内にいる従者が少しだけ見えるような細工が施されています。同じく江戸の狩野派絵師である狩野栄信筆「楼閣山水図屏風」(静岡県立美術館)の表現とも通じるところがあります。
狩野探信守道(たんしんもりみち・1785~1836)は江戸幕府の御用を務めた鍛冶橋狩野家の7代目当主。本作品は落款より法眼に叙せられる前、つまり文政8年(1825)以前に制作されたとみられます。探信守道は風俗画の模写作や大画面花鳥画が知られています。